世の中の



「ま、自由にやれや」
と仁が言ったあと、勝手に別荘に入ろうとする。

ちなみに深夜なので、亦部夫妻は寝ていた。

「警報なるよな?」

「警報ならしたら、犯人帰っちゃうよね?」

「うん」


ま、こんな会話をしている中、一人だけ呆然と立ち尽くしている人がいた。翔だ。

―どーしよ…。

額には冷や汗が浮かんでいる。

―俺別に理由ないし!!単なる興味本意だし!!しかも、この流れについていけないし!!


翔は遊びのつもりだった。いや、それなりの覚悟はしていたが、どこか遊び、どうにかなる、という風に思っていた。


―甘かったんだ。考えが。

―いつも、親父が何とかしてくれた。
―親父は政治家と繋がりがあるらしく、何かと工作をした。


小さいとき、東京にいたという父から話を聞いたことがあった。

その話を聞いたとき、父に怒った。

東京の方がよっぽどいいと言った。

父は、翔を一時的だけだったが、東京にまた引っ越した。

東京の学校では、翔は好き勝手した。

テンションが上がったという理由からであった。

ある日、一緒の幼稚園に通ってた子に怪我を負わせた。

その子の親は、家に来たが、翔の父の姿を見ると、手のひらを返したような態度をとった。


そして、学校、その子の親と共に、金をあげ、事件をうやむやにした。

しかし、事件はうやむやにしても、幼稚園の子たちは知っている。
居ずらくなった翔たちはまた十二島に戻った。

その時の名残か、翔は心の底のどこで"どうせ父が助けてくれる"と思っていた。

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