フェンス

ガチャ…

「ただいま。」

返事はない。
…当たり前だ。

10歳の時に父が急に失踪して母は気がおかしくなり自殺した。

一時は恨みもしたが時間がたつにつれて両親にたいする記憶もどんどん薄れていった。

裕はネクタイを緩め鞄を机の上に置きソファに腰をかけた…それと同時ぐらいに携帯が鳴りだした。

「もしもし?」

「もしもし…」

「真奈?」

「うん。」

いつもとは少し違った真奈の暗い声…

「裕は真優に告白しないの?」

「もう会えなくなるのに言ってどうするんだよ。」

「でも…言わなくても後悔するよね…」

「多分な…でも俺は言わないつもり…」

「そっか…」

「うん…」

「私も言わないほうがいいのかな…じゃあまたね。」

そう言って真奈は
電話を切った。



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