オバケの駐在所
「そりゃいきなり
オバケが飛んできたら
誰だって驚くだろ。
そうやって
ベロを出して
近づいてきたら
今にも食べられちゃいそう。

ほら、
カッパえびせんでも食って
その長い舌を引っ込めな。」

そう言って
おまわりさんは
ティッシュを1枚引き抜き
和傘が座っている
イスの上に置いて
スナック菓子を取り分ける。

「カッパは嫌いじゃ!
カラカサえびせん
持って来い!」

まるで子供のように
態度が大きくなった
和傘は
軽く頭をはたかれていたが
ティッシュに
盛ってある菓子を
1つ取っては口に入れ
右手で取っては
左手で取り
カスをこぼしながら
あっという間に
平らげてしまった。

「んあ〜、
喉がかわく〜!」

わざとっらしく
苦しそうな
しゃがれ声を出して
イスから飛びおりると
片足でキツネ色の下駄を
鳴らしながら
私の方に向かってくる。
そして窓を思いきり開けて
ヒサシから
零れ落ちる雫を
長い舌で受け止めていた。

間近で見ると
……怖いな。
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