オバケの駐在所
傘の真ん中には
大きな目玉があり
瞼のくぼみに艶やかに
はまっている
本物の瞳。
その下にある大きな口は
どこに繋がっているか
わからないほどの
口腔が広がっていた。

化かしの一種か、
それとも生物学上の
新しい異端種なのか。
なんにせよ
心を持ち合わせた
傘がそこにいるのは
確かだった。

「明日も雨だと
いいですなぁ。」

その傘は
私に話しかけたのか
曇天の雨空を見上げながら
呟くように
言葉を発する。
私は絶え間ない
雨音を聞きながら
その言葉に共感を覚えた。

雨は心の寄りどころ。
止んでしまえば
此処にはいられないし
どーすればいいのかも
わからない。

そしてまた
傘は開いたり閉じたり
呼吸のような
犬の尻尾のような
そんな動きを始めた。

……お前も私と一緒だな。
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