オバケの駐在所

それから数分、
私の隣で和傘はじっと
外を眺めていた。
雨は止む気配がなく
降り続けている。

後ろでおまわりさんが
ストーブを弱めにして
こちらに向けてくれた。

「もしかして
さっき話してた女の人?」

「……うん、
やっぱり雨が
強くなったから
帰れないんだよ。
ずっとあそこにいる。

俺、また行って
あげよーかな。」

車線を2つまたいだ
その先で
女の人は空を見上げながら
困った表情を
浮かべているようだった。

「やめとけやめとけ。
また骨を折られたりしたら
たまらんだろ。

それに俺は
ただの待ち合わせだと
思うけどな。」

「あの子は一度も携帯を
見てないよ?
待ち合わせなら携帯を
気にするでしょ。」

……和傘のわりに
ずいぶん現代文化に
こなれているもんである。
< 103 / 566 >

この作品をシェア

pagetop