オバケの駐在所
茶髪に染めた若い子と
堪え忍び生き抜いてきた
和傘のいぶし銀。
なかなか渋い
色合いではないか……。

「なぁなぁ、
ipod持ってる?
こんな雨の日は
R&Bだよな〜。」

……い、いぶしぎん。

「カバンの中に
あるけど
傘には貸さん。
濡れる!壊れる!

……あー、
もう行かなきゃ。
じゃあハジメさん、
素敵な傘
ありがとうございました。」

皮肉を言いながら
和傘を広げると
細い足はいつの間にか
傘の柄に戻っており
口と目はなくなっていて
立派な和傘に戻っていた。

その雨を弾く和紙の雨音が
ここまで聞こえてきて
とても心地良い。
口笛のような
傘が告げる陽気な音色。

嬉しいんだろうな……。

女の子は入り口の戸に
手をかけると
閉める前に
ふと私の方を見た。
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