オバケの駐在所
遅咲きのルーキー
白い絹のような雲が
空を流れ
風が薫る6月の中旬。
晴れ晴れとした
とある放課後に
私は1人教室の窓から
外を眺めている。
何故かと言うと……、
まぁそんな大した事でも
ないんだけどさ。
3階建ての校舎の
1番上にあるクラス。
窓際にある
私の席からの景色は
笠がかった富士が
街の合間から一望できて
ちょーいい感じ。
だが私の視線は
それよりも下、
校庭の隅にあった。
……23、……24、
すごいなあの人。
「またやってんなあの人。」
「好きなんだべ?
弱小野球部の
補欠君らしいけど……。」
……25。……26。
「ふーん、
下手なのは気持ちだけじゃ
どーにもならないかぁ。」
「うわ、
下手って言った。
かわいそ〜に。」
「おめぇが補欠君って
言ったんだろ〜!」
……27。……28。
私の後ろで
クラスメートの男子が
言葉に衣を着せない
会話をしているのが
耳に入ってくる。
視線の先にいる
その補欠君と
呼ばれる彼は
白い野球の
ユニフォームを着て
ただひたすらと
グラウンドの奥にある
バックネットに向かって
山なりで緩いボールを
投げていた。
……29。