オバケの駐在所
振り向いた彼に
私は慣れない笑顔で
迎えると
それを受けてか
彼も優しい笑顔になる。

……よし。

「……お前か。
さっきバカヤロウって
言ったのは。」

……あり?

「帰れよクソヤロウ。
だいたい
見てわかんねーかよ。
これで甲子園なんか
行けるわけが
ないっつーのボケ。」

さっきの優しい笑顔から
一転したとは
思えないくらいに
がらっときつい表情に
変わった彼。
さらに冷たい言葉を
浴びせられた私は
思わず白目を
向きそうになった。

……嫌なギャップ
もってるなこいつ。

「いや、さっきのは
私じゃないよ……。

あー……実は私、
人に頼まれてさ。
あなたが
あんま無理しないよう
止めてくれって。
なんか家に帰ってからも
ずっと投球の
練習してるんでしょ?
体壊しちゃうよ。」

私が言うと彼は
大きいストロークで
腕を鞭のように
しならせながら球を投げ
またもや的に命中させる。

「誰に頼まれたって?」

「あなたのお兄さんだよ。
ちょっとガタイのいい…。」
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