オバケの駐在所
遅くなっちゃったな……。
さっきまで何台か
走っていた車も
いなくなっている。

信号機の光が整然と
辺りの静けさを
増していた。

恋人と歩く静観とした
夜の町はほどよい
雰囲気を作り上げるが、
1人になると不気味に
空気がまとわりつく。

……そーいえば1人で
帰るのって久々だな。

あの人はこーゆー時、
決まって手を
握ってきた。
男の人にしては細い指で
包みこむ手。
疎ましいと
思った事もない。
あの人じゃないと
駄目なのだ。

「……電話、
かかってこないな。」

そう呟いた時、鞄から
着信音が響く。

まさか……!?

急いでディスプレイを
覗くと『小百合さん』
と出ていた。

…ですよね。

小百合さんは2つ年上の
会社の同期の人だ。
明るくて活発で
はつらつとした彼女は
社員から
親しまれている。
若干おせっかいな
所もあるが私も何かと
相談にのって
もらったりする。
……恋人を紹介して
もらったのもこの人だ。

しかしそんな彼女を
私は妬んでいた……。

私はおうおうとして
電話に出る。
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