オバケの駐在所
「……許せねぇよ。
俺は頭わりーしさ。
本気で甲子園に行こうって
子供の頃から死に物狂いで
練習してきたんだ。
それなのに……
こんな不幸な事って
ないだろ。」

肩を震わして
拳を強く握る彼は
今にも狸の校長に
殴りかかりそうな
勢いであったが
やむなく力なくして
俯いた。

声をかけて
励ましてやりたいが
どーにも言葉が
見つからない。

やがて空一帯の
押し黙っていた黒雲が
急に泣き出したように
大粒の雨を降らし
辺りを濡らし始めると、
どこからともなく
唐傘のオバケが飛んできて
私の肩にそっと
立ち止まる。

「ありがとう。
でも、私はいいの。
彼の上にいてあげて。
ピッチャーは
肩を冷やしちゃ
いけないから。」

それくらいが
私にできる事か……。

そしてハジメさん達は
人間の姿に戻った
狐の腕にも手錠をつけて
狸の葉っぱを
体に張り巡らせながら
狐を連れて行こうとする。
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