オバケの駐在所
場所は小さな
市民球場であったが
両チームの
応援団のエールや
ブラストバンドが
蝉の鳴き声を
かき消してしまうほど
盛り上がりを見せていた。

……まぁこっちは
ほぼオバケなんだけど。

隣で黒いポロシャツを着て
ウチワを扇いでる
おじさんが
どこからともなく
連れてきた集団で、
傍目は人間に見えるが
霊感がある私は
夏の炎天下なのに
冷え冷えと
鳥肌がたっている。

修二君がフォアボールを
出したり
晃君がデッドボールを
受けたりしたら
とんでもないヤジが
いちいち飛ぶ。

肝をとるとか
血ぃ吸うぞとか……。
はぁ。

「絶好調だな。
2人とも。」

ハジメさんは冷たい麦茶を
コップに注ぎながら言う。

……そう言えば
この人も
人間じゃないのだろうか?

私はハジメさんの
言葉に対して
内野席の下のベンチから
大きくはみ出して
指図するタマちゃんの事も
指差してあげた。

「あの子もな。」

「1ヶ月前は
泣きながらみみっちい球
投げてたのに
今や魔球も
投げちゃうもんね。」

「幸せか
幸せじゃないかは
自分で決める事だよ。
それが例え不幸であっても
あいつらにとっちゃ
ただの青春だったって
わけだ。
ところで魔球って何?」

ハジメさんは
大量に持ってきた
柿の種を
足元の2匹の
ゴキブリに与える。

「確か
SFFとかかんとか。」

私はその柿の種が
交番にばらまいた
ものじゃないかと
目をこらして
よくチェックした。

「そりゃすごい。
キリキリ舞じゃん。」

……私の胃もキリキリ。
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