オバケの駐在所
「ひえっ!」

と咄嗟に
体をくねらせながら
オカマみたいなポーズで
それを避ける。

しかしそれは虚しい事に
太ももの自慢の毛に
こびりつくように落ちた。

暗くてよく見えないが
それが何かは
匂いでもわかる。

赤ん坊はぐずりながら
必死に力んでいた。

「ぐはっはっはっ!
おのれ、こやつ!
身を守らんがために
爆弾を落としてくるとは!
見上げたもんだ!
わしに刃向かうとは
肝が据わっておる。」

思わぬ反撃に
わしは笑った。

こんな小さな体でも
ついてるものは
ついてるという事か。

「なるほど、
だがこの森は
そう甘くないぞっ…と。」

そう言った途端に
隣に生えている木が
大きな音をたてて
揺れる。

目を凝らして見てみれば
わしの切り離されていた
トラ柄の片腕が
木に襲いかかっていたのだ。

それは不可解な行動かも
しれないが、
しばらくすると何の
変哲もなく見える木は
苦しみながら
その姿を曲げだし、
腹がふくれた
醜い鬼へと姿を変えた。

だろうな……。

食べる事しか目がない
ただの餓鬼だが
そこら中に溢れるほど
数が多いぶん
始末におけない奴。

気づいていないと
思ったのか?
おせっかいな腕だ……。

わしは空に向かって
金属音のような
細い口笛を吹くと、
トラ模様の
体の大きな留鳥が
幾多となって
鬼の回りに群がった。

それはわしの下僕。
聞こえてくる鬼の悲鳴。

「ひもじいよー。」

まあ骨も残らんだろうな。
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