オバケの駐在所
そんな風来坊な片腕を
自分の体にくっつけると
その鬼の最後を
見届ける事なく
そのまま高い枝に
ジャンプして
更に反動で
青く茂る葉に飛び移り
木の頂上に出た。
そして鼻から思いきり
空気を吸うと
ハトみたいに
倍に膨れ上がる胸。

そっと赤ん坊の
耳を閉じてやると
天に向かって
わしは思いきり
雄叫びを上げた。

すると轟きとともに
集まり出す黒雲。
それはやがて霧のように
低い位置まで
下りてくるのだ。

そして見るも
妖しいその雲に
飛び乗ると
近くにある貯水池へと
舵をとり、
あぐらをかいて
空をゆうゆうと飛びながら
森を越える。

先ほどまで
ギャンギャン
叫んでいた赤子も
雲の上にいる事に
びっくりしたのか
目をパチクリさせていて、
肩に担いでいたその子を
雲の上へ降ろしてやると
うれしそうに
瞳を爛々とさせて
幼稚に声をだした。

「ばーぶー!」

よちよち尻を振りながら
そこら中を
這い回る赤ん坊。

邪魔者も
いなくなった所だし…
と、その後ろ姿を
舌なめずりしながら
どう料理して
やろうかなんて考える。

だって生きる事は
イコール食べる事。
他の命の上に
立ち続ける事は
食物連鎖であり、
またはそうでありたいと
思い続ける事が
弱肉強食の世の中を
生きていくうえで
大事なのではないか?

少なくとも
わしは強くありたい。
何千何百と幾何年、
そうありつづけたのだから。
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