オバケの駐在所
すると丸太ほどの
太さはあるわしの腕は
大きさを変えて
さも当たり前かのように
赤ん坊の腕となり
自然とそこに収まる。

しかしつけたのは
わしの片腕なんだ。
体が耐えきれずに
ちぎれて飛んで
しまうかもしれないな。

なんせわしは物の怪は怪物。
人が恐るる屈強な
化け物よ。

「……ぴったりだ。
どれ、動かしてみろよ。」

赤ん坊は生意気に
足を広げて座っている。

不思議そうに
生えた腕を確かめ
地面を2、3度叩いたかと
思ったら、
急に眉をキリリと吊り上げ
口を大きく開け
更に勢いを増して
縦横無尽に雲を這い回った。

……怪獣にでも
なったつもりか?

仕方なしに
わしも敵役として
それに付き合ってやろうと
同じく四つん這いになり
全身の毛を針になったと
言ってもいいくらいに
思いきり逆立たせて
赤ん坊に向け威嚇。

ごっことは思えないほどの
リアリティ。

脅して泣かすつもりだったが
もう彼には
怖いもの無しみたいで、
それを見るや
くるりとこちらを向き
勇敢にもわしの懐に
勢いよく突っ込んできて
わしのみぞおちに
虎の拳をヒットさせてきた。
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