オバケの駐在所
「あらあら、ぬー様。
何をなされてるんですか?
いつもは湖に雲をつけたら
すぐ下りてくるのに。」

「おう、濡れ女。
いや何、ちょっと
このガキがな。」

その女は全身が濡れていて
体に張り付いた髪を
足まで長く伸ばし、
体を覆う薄汚い布切れや
指先などから
大きな雫を落としていて
今まさに湖から
出てきたのだろう
という格好。

こいつはいつも
ジメジメしている上に
正体が蛇であるから
とても陰険で
怒らせると怖い。

「……なっ、なっ、
何ですその赤ん坊は?
……ひょっとしてまさか
そ、そんな事は
ないですわよね?」

「……ああ、
森に捨てられてたから
拾ったんだよ。
食べようと思ってな。」

わしはため息混じりに
言い返す。

「ですわよね!
ああ、てっきり
どこぞの馬の骨と
営んだのかと……。ほほほ。

……あら!かわいらしい。
玉のような男の子では
ありませんか。
食べてしまうのは
なんだか惜しい気も
しますね。」

女は顔を覗かせて
間の抜けた事を言いだす。

少し避けるように
していたのは
赤ん坊を包んでいる
白妙の乾いた布に
水滴がかからないよう
気を配っての事だろう。
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