オバケの駐在所
まだまだ時間も宵の口。
中止めの上に通る道路は
人里離れた貯水池とは言え
それなりに車通りもあるが
暗闇の中、
湖に舟を浮かべるとは
変なやつ。

更に平気な顔をして
わしに話しかけて
くるとは……、
よっぽどの鈍感なのか?
わしの声を聞いただけで
頭を抱えて怯える奴も
いるというのに。

……今日はイライラするな。

「おい、何してるか
知らねぇが
わしが見えねーか?
命が惜しけりゃ
さっさと消えろ。」

だがその警官は何故か
かいを漕ぎ出し
ゆっくりとこちらへ
向かってきた。

そいつは何を考えているか
わからない。

人間というもんは
弱っちくて意地汚くて
化け物を見たら
腰を抜かすもんだ。

なのにこいつときたら
平然としていて
余裕しゃくしゃく。
まるで平安の時代の
源頼政のようだ。
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