オバケの駐在所
地蔵のように押し黙る
わしの頭上に
黒雲は広がっていた。
通常の雲よりは
ずっと低い位置にあるが、
そこにあると
知っていなければ
わからないくらいの高さ。

口を開かなければ
気づく事はないだろう
なんて思っていたら
小舟には他にも
誰か乗っていたらしく
警官の後ろの影が動いて
そっと男に耳打ちをすると
2人は空を仰いだ。

その影には角が2本
頭から生えていて
体も跳ね返るほどの灰の色。

……こいつ、
鬼を従えさせているのか。

そして鬼と男は
こちらに手を振って
そのままゆっくりとだが
空に浮かび上がった。

どうやらもうわしに
興味はないようだ。

濡れ女はまだ
赤ん坊と一緒にいるのか?

あいつならやすやすと
赤ん坊を渡したりはしまい。

……矢で貫かれた時の
あいつの驚いた顔。
後を追って
下にこない所を見ると
わしを見限ったか?
笑わせてくれる。
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