オバケの駐在所
ついつい昔を思い出す。
己の強さを
誇示したいがために
屍を踏み倒して
上に立つ優越感。

上からは矢尻やら
鬼の角やら肉片が
にわかに降ってくる。

「ああ、辛抱たまらん!」

血は湧いて肉が躍る
その瞬間、
何か弾けるようにして
体が動きだした。

少々まとわりつくような
かったるさはあったが、
この抑えられない衝動を
暴発させるには
充分であった。

その機を逃さないように
すかさず橋の上に登ると
邪魔な車の上を
黒い影となって
不乱に駆け抜ける。

「きゃぁっ!」

「うぉわー!」

爪を立てて2、3台
飛ばしながら
小気味よい音をたてて
その場を走り去った。

人々はわしを見て
次々と叫び声を
上げていたが
それも心地いい。
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