オバケの駐在所
手の平に収まって
しまうんではないかという
その小さな存在に
思わず頬ずりしてしまう。

濡れ女の事を
馬鹿にしていたのに……。
いやはや、
最初で最後の
愛情ってやつか。

だが……まいったね。

見上げると
最後に残された1人、
銀色の鬼がいる。

警官を殺されて
憤りを感じてるのか
赤ん坊をさらおうと
息巻いてるのか、
体から眩い光を放ち
近づいてくる。

あの閃光……。
そして風貌。

見た事も聞いた事もない
不気味な奴。

「……えーい!
そんなのにわし等の運命
やすやすと
受け渡せるかい!」

こうなったら意地でも
逃げおおしてやる!
と、全身全霊の力を
振り絞る。

すると木の幹のごとく
体にからまっていた妖怪達は
音をたてながら崩れ
見事にその抑止力を
断ち切ってみせた。

そして足場をなくし
他の蹴落としてきた
化け物同様
地獄に落ちるように
湖のほとりへと
落下してしまう。

地面に叩きつけられたわしは
すでに意識が
もうろうとしていたが
そこには盆地みたいに
緑色の虚ろな小さな光が
たくさん水辺に集まり
ぼんやりと
漂っていたのがわかった。

……成仏しきれなかった
怨念か魂か、
どちらにしろ
いいものじゃあなさそーだ。
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