オバケの駐在所
「なんで私が知ってるのよ。
あんな気色悪いも…の…。」

と言った時、
私の心の中を何か
よぎった気がした。

それは道に立ちのぼる
陽炎みたいに
心の中にもやもやが
立ち込める。

……いや、気のせいかな。
見た事ないはずだけど
よく知ってるような
気もする。
どっかで……見た?。

それがなんだったか
思いを巡らせている時、
遠くで小さく聞こえてきた
パトカーのいくつもの
サイレン。

「……そーいえば
この前ここら辺で
殺人事件があったって
ここの交番の
おじちゃんが言ってた。
犯人はまだ
捕まってないんだって。
まさかあいつじゃ
ないよね?」

「さあ、私には
わからないけど…。」

忘れていたものを
思い出させるような
子供の言葉。
まるで私の心を
急かしているような
慌ただしい警告音。

心なしかサイレンは
近づいてきてる気がする。

……どうしよう。
早くしないと。
そーだ、あんな
土くれどーでもいい。

不安が焦りを引き連れ
徐々に膨らんでくる。
さっきまであんなに
普通でいられたのに
急に何かが
押し寄せてくるよう。
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