オバケの駐在所
その子はうろうろと
プールの園内を回りだす。

身の丈は僕と同じくらいで、
男の子なのに
短い髪を後ろで束ねている。
そしてなんでか
水着ではなく、
浴衣とは言い難いような
一枚の布の羽織りものを
着ているのだ。

だけど僕はそれ以上
話しかけるのを、
少しためらっていた。

名前はなんだったかな?
どれくらい昔に遊んでいた?
向こうは僕の事を
覚えているか?

……それにどうしてか
わからないけど
あの子の顔が思い出せない。
思い出の中のあの子の顔は
マジックで黒く
塗りつぶされたように
記憶から消えていたんだ。

なんでだろうな。
仲良く遊んだ
覚えはあるのに……。

するとその子は、
園内の自動販売機の隅で
控えめに座っていた
別の子供の近くで止まった。

そしてその子供の手をひいて
また歩き出す。

僕もやはり気になって、
その後ろをつけて歩いた。
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