オバケの駐在所
その時、隣で手を
繋いでいた子が、
急に僕の手を振り払った。

「夏彦くん爪長い……」

そう言って指先を
くわえるその子。

すると僕ともう一方の
手を繋いでいた
お姉さんも僕に聞いてくる。

「私達は向こう側の
太郎くんを呼びましょう。
お互いの組の
誰かの名前を披露しあって
友達をとりあうのよ。

ジャンケンをして、
負けた組の呼ばれた友達が
もってかれちゃうの。
夏彦くんもルールは
知ってるでしょう?」

僕はこの遊びは
なんとなく理解していたし、
隣の子の傷が
気にかかっちゃって
話半分で空返事をする。

ふと目をやると、
僕の手の爪がいつの間にか
長く鋭く成長していた。

それだけではない。
手首から先が
全部赤黒く変色してきていて、
自分の手じゃなく見えた。

……なにこれ。どうして?

僕は手を背中に
隠すようにして困惑する。

「……そう。
わかってるならいいわ。
約束を破ってはダメよ。
これはルールなんだから。」

「おーい、こっちは
決まったよ。
じゃあみんなで言おうか。
いーかい?せーの!」

と向こうで子ども達に
声を揃えるよう
促すお兄さん。

「夏彦くーん!」

……ぼ、ぼく?

「じゃあこっちも
声を揃えよーね。
いくよ、せーの。」

「太郎くーん!」
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