オバケの駐在所
名前を呼ばれた僕と、
『太郎くん』という
名前のその子は、
みんなに背中を押され
味方の陣から前にでる。

これから僕とこの子で、
戦いの明暗をわけた
男と男の熱いジャンケンを
しなきゃいけないらしい。

それは背中に
自軍ののぼりを掲げ
軍配を返すような
命運かけたその一戦……
っていう気分には、まぁ
当然ならなかったわけで…。

体がなんだかおかしい。
目に冷たい何かが
ほとばしる。

この感覚は……なに?

「ジャンケンポン。」

そうこう思ってるうち、
みんなの掛け声とともに
勝敗はあっけなく
ついてしまった。

「夏彦くんの負けー!」

「負けー!」

僕は太郎くんに負けていた。
まわりの子ども達が
口々に騒ぎ出す。

「負ーけ。負ーけ。
負ーけ。」

だけど何かおかしかった。
騒いでるわりに
何故かおとなしく立ったまま
微動だにしてないし、
口も動かしていないのに
声だけが響いてくる。

「負けた。ひひ。」

「こっちゃあ来い。」

「ルールは守れ。
嘘つきは
舌ぁひっこ抜くぞ。」

その時、
声の正体がわかった。

夕日が子ども達に
長い影を作り上げ、
人形のように
突っ立ったままの
子ども達とは対照的に、
それら黒い影だけが
執拗に踊りだす。

それらは角が生えていて
鬼のようにも見えた。

これが成仏するって
事なんだろうか?
この遊びのルールは?
ちゃんと聞いてなかった。

嘘つきは閻魔様に
舌を抜かれ
忠実なしもべとなるらしい。

もしかしたら
試されてるのかもしれない。
地獄に行くくらいなら
言うことを聞いたほうが…。
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