オバケの駐在所
僕らは古めかしい
小学校を飛び出し、
新しめのアスファルトが
敷かれた道路の上を走った。

やっぱりここは
いつも住んでいた
現世ではないらしい。

今や昔がごっちゃになって、
太陽までもが境が曖昧な
夕焼けのままだ。

その夕焼けに
後ろから照らされ、
長い影が地面に伸びていて
すぐ横で動いている。
何人も何人も走って
追いかけてくる。

「隠れよう。
捕まったら厄介だぞ。」

僕らはすぐそばにあった
桜の木の根元に
身をかがめて、
奴らをやり過ごそうと
息を押し殺す。

「ひひ、わしは内蔵を
食べるんだぁ。
せっかく家来に
してやろうかと思ったが
もう遅いぞ。」

「ひひひ、嘘つきの内蔵は
さぞかしうまそうですねぇ。
わたしゃあの若造の
舌を引っこ抜いて
やりたくなりました。」

「さてどこ行った?
逃がさないぞ。
ひぃっひぃっひぃっ。」

やがて奴らの足音が
遠ざかって
ほっとため息をつく。

「……あれは何?」

「…奴らは
地獄に住んでる鬼だよ。
もっともらしい
制約を作って
ここに連れ込んだ魂を
縛りつけようって輩だ。
体の一部をとりあげ、
自由がきかないようにして
自分の下僕にさせる。
それがたとえ遊びでも、
相手を勝負に負けさせて
実質的な弱みに
つけ込んでくる。
げんにお前も言うことを
聞こうとしてたろ?
あいつらの往年のやり方さ。
あんな遊び
突き詰めればいつかは
負けるに決まってんだ。」
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