オバケの駐在所
「よぉ、起きたか?
どうする?ここを渡るか?
ここを渡れば
美姫の所に戻れる。
それともほら、後ろ。」

おじちゃんは
横断歩道の手前で、
僕をおんぶしながら
起きるのをずっと
立って待っていたらしい。
そしてあごで促したほうには、
道の街路樹にぶら下がった
いくつもの提灯。
『祭』と書かれた
赤提灯が所々に
つるされていた。

「成仏の仕方は人それぞれ。
そこに行けば
きっと浄土に向かえるさ。」

そう言っておじちゃんは
信号機の下にある
補助信号用のボタンを押した。

辺りに鬼の気配は
なくなっていて、
空は若干影がかっていた。

どうやらようやく
日は沈んだようだが、
うっすら明るかった面影も
少し残っている。
夏の夕闇と言ったところか。

「ま、待って!
ほら!見てよ僕の手!
気づいたら
こうなってたんだ!
見……」

驚いた。
様子が変わっているのは
もう手だけじゃない。

Tシャツから出した腕も、
足もお腹も赤く
干し物みたいに
シワシワに固くなっていた。

……目の奥まで冷たい。
僕の顔はどうなってるの?
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