オバケの駐在所
やがて信号は青に変わり、
聞き慣れたわらべ唄を
鳴らしながら
彼岸と、し岸をわたす道を
結びだす。

見た目はただの歩道だが、
あの世とこの世が
繋がったんだろう。

そのメロディーを聞いてか
聞かないでか、
目の前にある交番から
女の子が飛び出してきた。
美姫ちゃんだ。

ここの交番の前の
交差点の補助信号は、
現世ではたしか壊れていた。

その聞き慣れない音に
感づいたのかもしれないが、
向こう岸から
こっちを心配そうに
眺めている。

目線はあさっての方向を
見ているので、
きっとその位置じゃ僕の事は
見えてないんだと思うけど。

「おじちゃん、
僕はどうしたらいいの?」

僕はたまらず聞いた。

「……成仏するのは
こわいか?」

「……こわい。」

「美姫はあー見えて
優しい一面があるから
いつまでもあーして
お前を待ってると思うぞ。」

「……うん。」

「お前の外見は
変わっていくけど
心まで変わる事はないし、
俺らが待っている夏彦のまま。
だから余計な
心配はいらない。」

「……うん。」

「…だけどあいつが
悲しんでる所は
見たくないよな?」

「うん。」
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