オバケの駐在所
「お嬢ちゃん……
何をしてるの……」

にわかな事で
気づかないくらいだったが、
そう聞こえた気がした。

後ろを思わず
振り返ったが
もちろん誰もいない。

「ここにいちゃあ
いけないよ……
ここは死んだ人の魂だけが
乗る事を
許されてるんだから……」

小さくガラスを
引っ掻いたほどの
弱々しい声だが、
この周りの騒音の中
今度は確かに聞こえた。

前を見ると
シャベルを持って
炎の中に石炭を
投げ込んでいた手が
貼りついたように
ピタリと止まっている。

その誰かに襲われるとか
そう言った雰囲気では
なかったんだけど
私はその時なんだか
今までにない悪寒を感じた。

「ごめんなさい!
乗る気はなかったんだけど、
……電車の連結部分にいたら
なんでかこの列車と
繋がっちゃったらしいの!
でもここの車掌に話したら
帰りの切符をくれたから!
えっと…それで!……」

私はその手に向かって、
声が届くように
叫んで説明をするが、
聞こえてるのか伝わってるのか
皆目わからない。

手は微動だにしないまま
固まったままだ。
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