オバケの駐在所
知り合い……か。
まぁ大方
私と間違えたんだろうけど。
いや、もしかすると
ナンパの常套手段って
可能性も……。

ってそんな事を
考えてる場合ではなく、
どうやら私達は今、
オバケ列車特別急行
黄泉発着便に身を委ねて
死の淵の際にいるらしい。
すでに終着駅までのレールも
敷かれている。

もはや笑い事ではない。

「私もあなた達と一緒なら
外に出られるかな。
また多摩川の土手沿いを
散歩してみたい。」

そう言う彼女の表情は
どこか楽観的で
今いちこの状況を
把握できてない
感じだったが、
彼女の姿を見ていると
空返事ぎみに
言葉を返してしまう。

するとその時、
重厚なる汽笛の音が
列車内にまで
聞こえてくるほど
力強く鳴り響いた。

「あ。開いた!なつみ!」

ハジメさんが私を呼ぶ。
後続車両への扉が
開かれたのだ。

……今のは機関車にいた
顔も知れぬあの人が
鳴らしたのだろうか?

結界が薄れたのか、
もしくは弱めてくれたのか。

なんにせよ私達3人は
車掌がいる後ろの客車へと
駆け込んだ。
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