オバケの駐在所
ハジメさんは女の人に
肩を担がれながら、
先に現世と
繋がっているかもしれない
その窓に向かっていった。

窓の外は本当にただ暗くて
真っ黒な空間となっている。

冥土へ通じる道は
なんだか心細くて
押し潰されそうで
とても孤独で……。
こよりのように
先が細くなっていくみたい。

でももう少しで
外へ出られる。

そう考えていたその時、
開いている窓の反対側の
薄暗い列車の中の影が
一部分だけ
少し揺らいだ気がした。
それは丁度
ハジメさん達の死角と
なっている所。

私達は忘れていたのだ。

この車両に乗っていた
もう1人の乗客を。

その黒い影は
次の瞬間大きく揺れて、
絡まるようにして
ハジメさんの手を掴んだ。

ハジメさんの腕を
掴んだその先からは、
次々と黒い影が
触手を伸ばすようにして
這いながらつたっていき、
皮膚を引っ張っていく。

それは化け物を
抑えつけてたものが
なくなって、
溜まってたものが
吹き出した感じだ。
化け物の体の至る所から
闇が暴れ狂って
噴出している。

私は目を見開いたまま
思わず驚嘆の声がもれた。

「いゃ……」

……って
驚いてる場合じゃない!
助けなきゃ!

腐臭と毒気が入り交じる中、
私は訳も分からず
まさに闇雲に、
ハジメさんを取り巻く
異質な影に手を伸ばした。
< 289 / 566 >

この作品をシェア

pagetop