オバケの駐在所
角ウサギは栄えては絶え、
繁殖しては跡目をなくし、
力を持つが故に
種族同士での
揉め事も増えていき、
なるべくして分家すると
山と山とで隔てた
お家争いを繰り広げる今に
至ったのである。

俺の額にも、
そのライムに
負けないくらいの
大きな角が生えていた。

……ただ俺は
そういっためんどうくさい
利己利欲の争いに
とんと興味が
なくなってしまったんだ。

ライムは事あるごとに
敵対意識を燃やしてくるが、
うんざりである。

境遇、年齢や体格、
背格好など
俺と似ている所が
多いからであろう。

俺もライムも親はいない。
おかげで荒れてた時期は、
女子供にも
容赦しなかったし、
欲しいものは暴力で
なんでも横取りしていた。

ただ一つ、
俺にはキャルロット姉さんが
いてくれた。
だからかはわからないが、
今ではライムとの
性格は対称的だと思う。

「……ちょっと
用事を思いだした。
出かけてくる。」

「また?
近頃多いのね……。
一体何を企んでるのかしら」

キャルロットは
まぶたを細めて
怪訝そうにこっちへ
視線を送ってきたが、
俺はそっと
口笛を夜空に吹いて
受け流した。
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