オバケの駐在所
すると月がパチクリと
一旦消えて現れる。

しばらくするともう一度。

それは雲に隠れたとか
そういったものではなくて
素早く黒いカバーで
覆ったような。

……まるでまばたきのような。

怖いもの知らずな俺だが、
ゴクリと唾を飲み込み
とてつもない嫌な事を
想像してしまった。

これはまさか擬態なのでは
ないだろうか?
恐ろしく霊力のもった何かが
そこにいて、
俺らの目を欺こうとしている?

よくよく気を張って
眺めてみると
ただならぬ威圧感が
そこにはある。

ぶ厚い雲はじゃばらにうねり
金色の月はなんだか
虹彩のように思えてきた。

とても大きな
いにしえの化け物……いや、
バカなことを考えるのは
やめよう。

せっかくの宴がそこに
待ってるんだし、
山隔てなく楽しんでいるんだ。
不気味な存在が
そこにいるなんて知れたら
ビビりな天狗が
お開きにするかもしれない。

そう思って俺はきびすを返す。

……だいたいあんな
お餅みたいな
美しいお月さんさ。

金色のウサギならまだしも
雲を得た龍が
あそこから見ているなんて
考えたくもない。
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