オバケの駐在所
「さゆりさん……?」

おじさんは
キョトンとした顔で
こちらを向く。
疑いようのない真実の瞳。

この人はきっと
わかってるだろう。

……何も言わないで。

さっきみたいに
手でも繋いで出掛けたいの。
映画とか買い物とか
したい事はたくさんあるの。

……だから。

「君だよ。
みゆきちゃん。
……君は自殺して
しまったんだ。
だから俺に案内させた。
……このままじゃあ、
まぁ確かにそうだ。
かわいそうだから。」

私は顔を両手で覆いながら
首を横に振った。

「さっき言ってただろう。
雨なんて降ってないよ。
昨日から雲1つない
晴天じゃないか。
君は多分
このシャワーの水を
雨と勘違いしたんだろう。」

そう言いながらおじさんは
ノブを回し、
シャワーを止めて、
洗面所の上の棚にある
バスタオルを
冷え切っているであろう
死体に被せた。
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