オバケの駐在所
「すごいな……。
首を切ったのか。
相当な決意で、
…やったんだな。」

首の頸動脈、
喉ぼとけに並んで
切り開けたその傷口は、
肉や皮が内側から
押し出され
唇のように
腫れ上がっていた。

「……刺したのかな?
…でも信じたく…ないよ!
だってその顔!」

私は重たそうに
おじさんの腕に支えられてる
頭を指差す。

「……私はもっと
不細工だよ。」

凄惨な現状のわりに
表情は清らかで
鼻筋のとおった
凜としたその女性は
誰よりも美人に思えた。

血も映える。

死体……ではない。
いや、
そう思いたいだけか。
魂をもたないそれは
人形にしか見えないんだ。

私は今ここで息をしている。
涙が出そうになっている。
胸が苦しいし
あなたも
私を見ているでしょ?

おじさん……!
私は生きてるでしょ?
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