オバケの駐在所
「お前は……、昨日の……」

「ヒッヒッ、
アリバイの証拠を作るため
電車の時間を
気にしているようだけどね、
義母の言うことじゃ
ただの証言にしか
ならないよ。
だいたいそんな事したって
無駄さ。
殺人事件じゃ警察だって
本気で捜査する。」

俺は耳をうたぐった。

なんでこいつは
心を読むように
俺の考えていることが
わかるのだと……。

「お前のことなら
なんでもわかるさ。
大野かずひろ、27歳、
理学療法士。
れいかとかいう女が
入院してる病院に
仕事場を移そうかどうか
考えているね?
……ただ、
いま気になっているのは
昨夜から家に現れたほうの
れいかの存在だ」

昨日からまるで
おとぎ話の世界に
まぎれこんだような
錯覚さえする。

あまりに今の状況が
非現実すぎて
脳の認識がついてこない。
頭がクラクラする。

「昏睡から脳死状態だの
まだまだ医学は
完璧じゃないからね。
どうやら義母には
見えていないあの妻の霊が、
やはり彼女の死を
意味してるんだとしたら……。
俺はこうするしか
なかったと……。
憎いあいつを
この手で葬るのが
彼女や1年前の事件に対する
弔いになったんだと……」

「だまれ!」

俺はばあさんの胸ぐらを
両手でつかんだ。

なんでこんなことが……。
夢なら覚めてくれ。
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