オバケの駐在所
中は店というのにも
そぐわない
こぢんまりした
暖かな空間だった。
ラジオの音が外にもれるのも
もったいなく感じるくらい。

そこで警察は
熱燗を飲んでいた。

店主は……いなかった。

「おう、きたか。
座りなよ。」

警察は普通の人間のように
見えるが、
あのばあさんの知り合いなら
やはりオバケなんだろう。

俺はとりあえず
意のままに従って
ダウンジャケットに雪を
積もらせたまま
隣に黙って座った。

なんで俺を呼んだ?
何を言われるんだ?

そろそろ死体が
見つかるころかもしれない。
早いところこの街から
撤退したいのに……。

色々な思いが心のうちを
さくそうする。
しかしその時だ。

「殺したのか……。
俺は人間だよ」

「嘘だ!」

俺は机をたたいて叫んだ。
取り分けてあった
おでんの具が少しはねた。

「あのばあさんもそうだ!
お前も!
なんで俺の心のうちが
わかる!?
知ってるぞ……
そーゆーオバケ……。
サトリとかって
人の心を読むんだろ?」

「違う。
まったく……
狐憑きのばあさんから
河童の目玉を
もらったんだろ?
こんなのも見えないのか?
情けない」

そう言って警察のそいつは
俺の頭の上から何かをとった。

確かに髪型がいつもと
違う感じはしてた。

それは雪でも寝癖でもない
あの人面蜘蛛だった。
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