オバケの駐在所
取り急ぎ――
北よりの風が
浮き世の俗をいっそう厳しく
冷えきらせる。
そんな一段と頬が赤くなる
季節のことだ。
「なぁ、どう思うよ」
「さぁ、
気のせいじゃないのー?」
遠くのものまで
近くに見えるくらい
静かな街並み。
陽はだいぶ傾いていて、
冬の日差しの軟弱さに
つい肩をすくませる。
時刻はまだ今しがた
授業が終わったばかりの
放課後。その帰り道。
薄地のマフラーに
技ありのシルエットを
かもし出す
ダッフルコートを着て、
むくれる彼の隣を歩いていた。
もちろん彼であって
『彼氏』ではない。
「最近どうもこそこそと
2人で帰ってるみたいでよ。
怪しくねーか?」
その彼はPコートのポケットに
両手をつっこんで
あまりかんばしくない表情を
浮かべていた。
私はマスク越しに
言葉を返した。
「……晃くんは
優しそうだしね。
タマちゃんも
何も考えてないようで
実はませてるところもあるし。
でももし付き合ってても
何も悪いことは
ないんじゃない?」
それは修二くんも
わかっていそうだったが、
何かが面白くないらしい。