オバケの駐在所
「ちょっともう!
……いるならいるって
言ってよ」

「知らん。
それよりこれ見ろよ」

修二くんが
アゴを向けた先には
祭壇を置いたような
小さなお墓があった。

道の横には棚のように
高くなった土の壁があり、
坂道を使って
段差ができていて、
せり上がった土の先には
街で古くから
あがめられているお寺がある。

その地盤を支える
金網のあいだからは
木の根っこがはみ出してて
管理は行き届いていない
みたいだけど、
その土と土の間。

藁でできた
雨除けの囲いのなかに
それはあった。

「……だから、何?
別にめずらしくも
ないでしょ?墓なんて」

さっきの和服の人はすでに
いなくなってしまった。

「いや、……なんか今、
……動いたような」

「はあ?墓がぁ?」

アホらしいと思いながらも
しゃがんでいる
修二くんの背中ごしに
身をかがめて
見てみようとしたその時、
私は目を見開いた。

わずかにだがほんとうに
墓が動いたのだ。
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