オバケの駐在所
……こんな白昼堂々。
それも土の下から何かが
突き上げたようだった。

「う、う、……動いたろ?
もぐらか?」

……そうであればいいと思う。

逃げようと思ったけど、
とりあえず
私たちは固唾をのんで
次の経過をうかがった。

目の前に修二くんがいたのは
幸いだった。

いざとなれば押して
囮にしよう。
……いや、足が
すくみそうだったら
負ぶってもらえるし
状況に応じよう。

いわんや人間自分が
1番かわいいものである。

ところが、
不意に突然後ろから
誰かに声をかけられた。

「ねえ」

「ぎゃあ!」

と、私は驚いて修二くんを
思いきり押した。

そのまま修二くんは
墓のトウバや位牌もろとも
勢いよく前へぶっ倒れた。

振り向いたらそこには
明るい藤色の着物をきた
女の子がびっくりした表情で
立っていた。

さっきのオバケではない。

年は私と同じくらいで、
髪を斜め上に1つ束ねている
黒目の大きい
見覚えのある女の子。

「あれ?おとなりさん?」

その子はニコッと笑って
私の前を横切ると、
倒れた修二くんの
手をとって起こし、
倒れたお墓も
元の位置に直してくれた。
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