オバケの駐在所
生きることって
大変なことだったんだなって
今さらながら実感したり、
逆に自分の
生命力の在りように、
ほとほとあきれ返ったり
する時もある。

人間は適応力があるというか
なんというか。

……それでも世の中
知らないことばかりってのを
痛感する日々。

ちなみに私たちが住む
日暮町は、
こんなふうに歩いていける
距離じゃないけど、
花遊さんについていけば
なんとなく辿り着けるんじゃ
ないかと思った。

オバケの通り道は
人の常識に
収まるところじゃあない。

いや、つまり
何が言いたいかというと、
……不思議なものは
ご近所にありふれてるって
ことかな。

私は本当に人間みたいに見える
花遊さんの手を
離さないようにして、
人っ子1人みかけなくなった
奇妙な街を歩いていった。

下駄の音だけがやけに
耳に残る。

やがて私たちは薄暗い脇道から
縦に細長い出口を抜けた。

「ん?……え!?」

すると目の前にいきなり
あのおまわりさんの交番が
現れた。

……マジか。

それに今たしかに
ここから抜けてきたのに。

すぐ真後ろには
細長い電柱が立っていた。
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