オバケの駐在所

――その日の夜の事。

私の家は
アパートの階段を登った
2階の一番奥にあり、
表の通りが見える
唯一の角部屋にあった。

その暖房のきいた部屋のなか
ベッドをソファー
がわりにして、
寝る前にマンガで
思考回路を
肥やそうとしていた私。

しかしベッドの横にある
窓のサッシのすき間からは
冷たい空気が
地だん汰を踏むように
声をあげていて、
私は半ばくつろぎつつも、
今夜はその
激しく吹くカラ風に
だんだんと気をとられて
いってしまっていた。

カマを持ったイタチとか、
袋をもった鬼など。

オバケってのは
人の想像の産物が
ほとんどだから、
自然現象から突如
生まれてきたとしても
おかしくはない。

壁1枚隔てた向こう側に
それらが息をひそめているって
こともありうる話だ。

なんてマンガのページを
めくりながら
夜更けに1人、
よからぬことを考えだす。
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