オバケの駐在所
しかし、どうしよう。
花遊さん……、
悪い人では
なさそうだけど……。

さっさと修二くんを呼んで
目を覚まさせてやれば
よかったものを、
私はこの時不覚にも
悩んでしまった。

2人が互いにどんな表情を
しているのかは見えないし、
ここで声をかけるのは
野暮だろうか……。

迷いは判断を鈍くさせて、
2人はやがて通りの向こうへと
消えてしまった。

私は格子に手をかけたまま、
ベッドに膝をついた。

……惚れちゃ駄目じゃなくて
かかわるなって
言っておくべきだった。

……バカ修二。

街中は突然の停電で
闇に包まれ、
カラ風は枯れた木々の間を
あざけり笑うように
吹きぬけている。

やわらかな月明かりが
部屋の中にまで
差し込んでくるせいか、
その日は床についても
妙に人肌を恋しくさせる夜と
なってしまった。
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