オバケの駐在所
その夜は昨日とうってかわって
静かで穏やかな夜だった。
言うなれば私の心だけが
ざわついている。
修二くんは今日も
来るのであろうか……?
大切な友達として……、
色香にだまされて
骨抜きにされる姿は
なるべくなら見たくない。
ただ、余計なわだかまりを
作るのは
よろしくないことだけど、
もしのこのこ来るようであれば
2人で何をしてるのかも
はっきりさせたいところ。
何故にはっきりさせたいかは
深く考えていなかった私。
その答えはわからないままで
いいだろうと
思っていたからだ。
私は部屋の明かりを消して
外の道路を見張っていた。
あの特有の下駄の音は
よくとおる音だから
来たらすぐわかるはず。
壁にはりつき、
カーテンの隙間から
さながら容疑者を待ちかまえる
刑事のように
緊張感を漂わせて
闇に目を凝らす。
だがそうしていたら
外の桜の木の脇に
予期していない人影が見えた。
お墓から出てきた和服の男だ。
名前は確か新三郎さん。
キョロキョロと辺りを
うかがっているところから
察すると、
花遊さんに会いに
きたんだろう。
仕方なく私は
ファーのフード付き
ジャケットを羽織り、
おせっかいな気持ちを
持て余しつつ、部屋を出て
アパートの階段を
駆け下りていった。