オバケの駐在所
「新三郎さん!」

と、私がなんの気兼ねなく
話しかけると
腰を抜かしそうに
なるくらい驚かれた。

そして必死に
人差し指を口の前に立てて
アパートの2階をさす。

「シーッ、シーッ!
バレちゃう」

「へ?会いに
きたんじゃないの?」

「いや、そうなんだが……」

新三郎さんは
ためらっているようだった。

まぁ永年想いを
寄せていた人に
あんな態度を
とられてしまっては
尻込みするのも頷けるけど。

しかしどちらにしろ
こんな所でうろつかれてたら
警戒されて逢い引きの現場を
おさえられないかも
しれないし、
2人が一緒にいる所で
出くわせてしまったら
目も当てられない。

「手紙のやりとりを
していたんでしょ?
あの時は新三郎さんも
会えたばかりで
気が動転していたし、
突然だったから
驚かれただけだよ。
それに花遊さんはさっき
出かけていっちゃったし。
また日にちを
改めたほうが……」

私は新三郎さんの手を掴んで
その場から離そうとした。

しかし――
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