オバケの駐在所
「あのお露って人は
どこに向かってるの?」

「おそらくは自分の巣。
墓の下さ。
奴と3日も一緒にいたら
もう戻れなくなる」

考える猶予もない。
とにかく
後をつけなければ……。

修二くんは
とり憑かれていたのに、
疑ってばかりだったことを
私は今さらになって悔やんだ。

「……新三郎さん、
交番にいたおまわりさん
覚えてるよね。
墓の下で私が待ってるって
言っといてくれない?」

「追いかけるのか?
戻れなくなるやも
しれんのに……」

「やばいと思ったら
逃げるつもりだよ。
それに放っとくわけには
いかないじゃん。
お願いね。私ビビりだしさ」

ハジメさんを呼んでも
救われる保証はない。

しかし少しでも
怖い気持ちを払拭しなければ
足が前へと
進まなかったのである。




お露は歩くスピードは
けっして早くはなかった。

足音が先に鳴ってるんじゃ
ないかってくらい、
動作が妖艶でなまめかしくて。

つけるのは容易い。
だけど彼女が
曲がり角を曲がるたびに、
それがむしろ私を
引き返したいという
衝動にかりたたせる。

ただおびきよせている
だけだったらどうしよう……。
もしもそこで……
壁の向こうで
待ち構えていたら。

心臓にヤスリをかける思いだ。
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