オバケの駐在所
長屋の中は暗くて
視界はほぼ無いに等しく、
見えるのは奥にある小窓。
その横に伸びているのは
闇を一層深くさせている廊下。

その廊下の手前に
2階に上がる階段の引き戸が
人が通れるくらい
開いていたので、
私は手で先を探るようにして、
それを一段ずつおもむろに
登っていった。

2階にも同じように
狭くて長い廊下が
広がっていたけど、
その先にはわずかに
灯りがもれている部屋。

幅の無い部屋のしきりは
切店の遊女がいる
お座敷といったような
感じだ。

……修二くん、無事でいて。

私は恐怖と孤独に耐えながら
灯りがもれるその部屋に
忍び足で向かう。

そしておそるおそる
部屋をのぞくと、
窓際の小さな机に向かって
あぐらを組んでいる
誰かの背中があった。

窓を開けながら、
籠の行灯を置いた机の上で
何かをしている。

部屋の中には他に布団が1組、
手狭に広げられていた。

「……修二くん?」

「おお、何してんだ?
こんな所で」

振り向いた顔を見て
私は胸を撫でおろした。
……だけど。
私はちらっと横目で
乱れている布団の意味を
考えた。
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