オバケの駐在所
「やあ、
探しましたよ。
急に
飛び出されるんですから。

さあ、
他のお客様も
お待ちになっております。」

男の胸には
プレートがついていたが、
子供の字なのか
平仮名でぎこちなく
『しゃしょう』と
書かれていた。

「…どこに止めてあるの?」

「すぐそこのバス停です。」

胸のポケットから
金色の懐中時計を出して、
それを片手で器用に
巻きながら時間を確認する。

「では私は戻ってますよ。」

事を伝えると
車掌は制帽を
さらに深くかぶり直し
アパートの階段を
音も無く下りていった。

「……昨日
追いかけられた人だね?」

「見てたの?」

私は思わず聞き返した。

……そーいえば
坊やに会った時、
躊躇なく戸を開けたな。

「じゃあ、
最初から
わかってたんだね…。
私が生きていない事。」

それでもなお、
一緒にいてくれてたのか。

ありがとうおじさん……。

「……まあね。

だって裸なんだもん。」
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