オバケの駐在所
「なんなんだよお前は。
別にあの人から
隠れる必要はないから」

と、修二くんが
声を忍ばせて耳元で言う。
私も声をおとして
バカにも理解できるように
教えてあげた。

「……あの人はオバケだよ」

要旨をとらえていて
もっともわかりやすい答えだ。
しかし――

「知ってる」

「えっ?」

「知ってるって。
あの人は墓の下に住んでる
オバケだってんだろ?
そんなの百も承知だよ」

「じゃあなんで?
なんでここまで
あの人について来てるの?
死ぬかもしんないのに、
1日ならまだしも2日間もさ」

「だーかーらー、
頼まれたって言ったろ?
それにあの人は
悪いオバケじゃないよ」

「ああ、そっか。
新三郎さんを知らないんだ。
何十年も人のことを
閉じこめたりするらしいよ、
あのオバケは」

「それは……、聞いたけど。
でも気持ちは
わからなくはないよ」

……はっ?まったくもって
ちゃんちゃらおかしい。

「何?なんなの?
わざわざこんな所まで来て……
折り紙なんてさ、
信じられない」

私は頬に手をあてながら
さっきの事を思い出した。

それほどの事を
したとも思えない。
だけど心に引っかかっていた
ことならある。

……色香に
惑わされちゃってさ。
私のことが好きなんじゃ
ないのかよ。

「あ?なんか言った?」
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