オバケの駐在所
私は布団をひっぺがえし、
そして彼の胸ぐらをつかんだ。

「あんな下品な女の、
どこがいいの!?
ただちょっと身長が高くて
ちょっと綺麗なだけじゃん!」

断じて嫉妬してるわけじゃ
ないけど、悔しい。

ほっぺたはまだ
ジンジンしている。

「私のほうがよっぽど……」

……勝るとこが
思い浮かばないけど。
……やさしいじゃダメかな?

「よっぽどなんだい?
オカメちゃん」

すると後ろから声がした。
振り向くと、
部屋の隅に血のような
真っ赤な着物を着たお露が
腕くらいに長いキセルを
ふかしながら立っていた。

足は消えている。
実に都合よく幽霊らしい。

「妬けるじゃないか。
1つの布団で男女が
もつれ合うなんてね。
だけど節操がないのは
いけないよ。
勝手にあたしの家に
足を踏み入れるばかりか
人のことを色欲魔扱いするたぁ
盗っ人たけだけしい」

お露はしゃなりと
近づいてきて、
指で私のアゴを浮かした。

「丁度家の裏の
斎場が空いてるんだ。
行ってみるかい?」

その問いかけに首を
小さく振る。

私は震えていた。
お露の冷えた目からは
生き長らえる術を
微塵も感じさせないからだ。

いったい何人もの人間が、
このお露に取り殺されて
きたのだろうか?
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