オバケの駐在所
まさか精気を吸おうと
しているのだろうか……?

「いや、墓って言っても
私の墓ってゆーか、
でもこんな所で
死にたくないんです!
ああ、こんな所って別に
そんな変な意味じゃ
なくて……」

なんてテンパりながら
助けを乞おうとしたら、
私の洋服の中に
氷のようなめちゃくちゃ
冷たい手を直に這わせて
撫でてきた。

思わず声が出そうになったが
我慢した。

「あんたかわいいねぇ。
安心してよ。
ここは私の部屋だけど
修二とは何もしてないからさ。
千代紙を丹精込めて
折らせただけ。
千代紙細工は人間と同じように
精気をもつからね」

そう言いながら追い討ちを
かけるように
首筋を舌でなぞる。
もう意識は
ぶっ飛びそうだったが
なんとか保ってる感じ。

だけどお露は
ふと鼻で小さく息をついた。

「……でもあれは
生き別れの娘の形見でさ。
粗末に使うもんじゃないけど、
仕方ないさね」

私はその機をついて
すかさず質問をぶつけた。

首筋だけはほんとイヤ……。

「い、生き別れちゃったん
ですか?」

ちょっと強引だったが
致し方ない。
ってゆーかオバケに
生き別れもへったくれも
ないような気もするが、
そこはスルーだ。

「……そう。
おヨネっていってね。
いつも大好きな千代紙を
箱にいれて
持ち歩いちゃってさ。
本当にかわいい子だったけど
今頃どうしてるかね」
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