オバケの駐在所
遠くのほうは
炎の渦にのまれていて、
火の手は間違いなくこちらに
進行しているのが見てとれる。
それなのに何故かお露は
そのまま動かなかった。
「新三郎さんって人が
忘れられないんだろ!?
その人とずっと一緒に
いたのに、
逃げられちゃったから
もうどーでもいいなんて
思ってるんじゃないよな!?」
慌てふためいて
とりあえず枕を持ってた
私だったが、
急に浮き彫りになった
思わぬ話にきょとんとした。
「……忘れられない?
お露は新三郎さんに
恋をしていたの?」
私がつぶやくと、
お露が呆れたとでも
言ったように
キセルを歯でくわえる。
「緊張感がないね。
……ただの横恋慕だよ。
あたしのものにしたいから
新三郎を閉じ込めていたんだ。
それに何十年も
ここで連れ添ったのに
どうでもいいなんて
思うはずがないだろ?
そうじゃなくて
負けたなと思ってさ」
そう言って煙を外に向けて
吐き出したが、
外との温度差の対流に
跳ね返されて、
虚しく部屋の中を漂った。
炎の渦にのまれていて、
火の手は間違いなくこちらに
進行しているのが見てとれる。
それなのに何故かお露は
そのまま動かなかった。
「新三郎さんって人が
忘れられないんだろ!?
その人とずっと一緒に
いたのに、
逃げられちゃったから
もうどーでもいいなんて
思ってるんじゃないよな!?」
慌てふためいて
とりあえず枕を持ってた
私だったが、
急に浮き彫りになった
思わぬ話にきょとんとした。
「……忘れられない?
お露は新三郎さんに
恋をしていたの?」
私がつぶやくと、
お露が呆れたとでも
言ったように
キセルを歯でくわえる。
「緊張感がないね。
……ただの横恋慕だよ。
あたしのものにしたいから
新三郎を閉じ込めていたんだ。
それに何十年も
ここで連れ添ったのに
どうでもいいなんて
思うはずがないだろ?
そうじゃなくて
負けたなと思ってさ」
そう言って煙を外に向けて
吐き出したが、
外との温度差の対流に
跳ね返されて、
虚しく部屋の中を漂った。